Galveston
今週は何を思い出したかといいますと・・・。
アメリカで先月のハリケーン・カトリーナに続いて今度はリタというのが、負けず劣らずの強さと大きさで、傷跡いまだ癒えぬ南部に再び上陸の可能性強まり、今度はブッシュ大統領のお膝元のテキサス州が危ない。大きく強い台風が多く発生するのは地球温暖化のためで、京都議定書を無視してCO2 削減に取り組まないブッシュに天罰が下るのか、と思いきや、急速に勢力は衰え、コースは東よりに逸れテキサスの中心部は難を免れました。テキサスにいる友人は、店では日用雑貨や食料品が完全に売り切れていてもぬけの殻で、まるで核戦争でも始まるかって雰囲気だったけど、結局雨一滴すら降らず拍子抜けで、逆に水不足が深刻だ、なんて言ってました。
それでも並以上のハリケーンだったことは間違いなく、進路となってしまったテキサス東部には相当の爪あとを残し、その中で直接上陸した場所となったテキサス最東南端のガルヴェストンという港町がにわかに脚光を浴びました。
このガルヴェストンという町を僕がなんで知ったかというと、やっぱり音楽からでした。そのものずばりがタイトルになっている曲があるんですね。グレン・キャンベルの69年の、アメリカのチャートで4位まで上がったヒット曲。
曲を作ったのはJimmy Webb。
彼は日本ではあまり知られていないようですが、ソングライターとしてはポップスの歴史に残る人で、バカラックと同じように評価されていい人だと思います。
5th Dimension の“Up, Up and Away”「ビートでジャンプ」とか、オリジナルはRichard Harrisで、後にドナ・サマーがディスコ風にカバーした”McArthur Park”なんてのが代表作ですね。
ソロになった後のアート・ガーファンクルがウエッブ作品を好んで取り上げ、アートのソロデビュー曲 “All I Know”もウエッブ作曲だし、ウエッブにアルバム一枚丸ごと任せたこともあります。
60年代暮れはまだ若かったウエッブが最も忙しかった時期で、その頃、ウエッブ作曲、グレン・キャンベル歌唱のコンビでご当地ソング三部作というのがあるんですけど、最初はグラミー賞の最優秀歌曲賞に輝いた”By the Time I Get to Phoenix”、「恋はフェニックス」というとんでもない邦題が付いていましたが、西海岸で恋人が寝ている間に黙って飛行機に乗り、フィニックス、アルバカーキ、オクラホマとどんどん離れていって、彼女は僕がもういないと気付いて泣き出すだろう、という失恋の曲。二曲目が一番ヒットした”Wichita Lineman”で、カンサス州ウィチタで、歌手になった恋人と遠くはなれて一人で働く架線作業員の歌で、やはり失恋の歌。そして三曲目がこのガルヴェストン。
三曲の中で最もアップテンポで明るい曲だったので、他二曲が失恋を題材にしているのに対照的だなと思って、歌詞を確かめたことがあるんです。
「まだ海風が吹く音が聞こえる、まだ彼女の黒い瞳の光が見える
僕がガルヴェストンを去ったとき、彼女は21歳だった
まだ、波が岩を打つ音が聞こえる その瞬間、僕は大砲から放たれる光を見る
そして僕は自分の銃の引き金を引き、ガルヴェストンを夢に見る
彼女はまだ、二人でよく走った砂浜に立って、海を見ながら、僕の帰りを待っているはずだ
僕は死ぬのが怖い、彼女の涙が乾く前に死んでしまうのではないかと
再びガルヴェルトンで、海鳥が飛ぶのを二人で見る前に死んでしまうのではないかと」
そう、ガルヴェストンとは、ベトナム反戦の歌だったのです。
ここ数週間、カトリーナ、リタとならんで、シンディという名の女性がアメリカで話題を集めています。自分の息子がイラク戦争に従軍して殉死し、その理由をブッシュ大統領自身に問いただすためにテキサス州クロフォードの私邸で座り込みの抗議行動に訴えたシンディ・シーハンさん。その彼女も参加して、ワシントンで、30万人規模の反戦デモが展開されました。これだけ大々的な反戦運動はベトナム戦争以来のことです。
今のアメリカこそ、ガルヴェストンを思い出すべきだったのです。リタが上陸場所にガルヴェストンを選んだことは、ひょっとしたら偶然ではなく、やはりブッシュへの「天罰」だったのかもしれません。
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コメント
Prof.Harryさん、
TBありがとうございました。
恥ずかしながら、ガルヴェストンがジミーの作った曲だとは知りませんでした。記事の内容もすごく掘り下げられていて、しっかり読ませて頂きました。またお邪魔したく思い、Linkさせて頂きました。事後報告ですいません。不都合がございましたらお知らせ下さい。宜しくお願いします。
投稿: Kintaの名曲名盤宝箱 | 2006年8月22日 (火) 10時29分
KINTA様、コメントありがとうございました。ジミー・ウェッブについて書いている記事はなかなかないものだから、見つけてうれしくて思わず繋いでしまいました。こちらこそいきなり繋いでしまってすみません。他にも関連付けられる記事がありますのでつなげさせていただきますね
投稿: Prof.Harry | 2006年8月25日 (金) 15時11分