Vincent
克也さんが、実は広島のお好み焼きをあまりお好きでないこと、名古屋の古いリスナーの間では結構有名な話だったんですけどねえ。
さて、9日のベストヒットUSA、Star of the Weekはリック・アストリー。
久しぶりでしたね。一時期、完全に消えちゃったって言われてました。
童顔で、80年代に流行った短く清潔なヘアスタイルでアイドル的扱い、でも声と首が太く、背後にはストック-エイトキン-ウォーターマンがいて音作りもそれなりに本格的でした。
その彼がカムバック、どんな音になるかと思いきや、曲はカバーで、しかもゴッホのことを歌ったVincent。
以前の彼からは想像もつかない選曲でした。
この曲は、ドン・マクリーンの曲のカバー。
70年代初めのシンガーソングライターのブームの一翼を担った人ですね。いろんな意味でカバーに縁のある人です。自分の曲がカバーされるし、自分もカバーで有名になった。
彼の代表曲はなんと言っても「アメリカン・パイ」。72年に全米ナンバー1を4週続けた。原曲は8分以上もある大作。彼のヒーロー、バディー・ホリーの1959年の飛行機墜落死を、音楽が死んだ日、と嘆く曲。
この曲は最近、と言ってももはや6年前の2000年になりますが、マドンナにカバーされて新たにお馴染みになりました。これも相当意外なカバーの取り合わせだった。フォークのイメージが強い原曲をエレクトリックポップにしちゃった。
Vincentはそのアメリカン・パイのフォローアップヒットでした。
同じ72年頃、もう一つ彼を有名にしたのは、ロバータ・フラック「やさしく歌って」”Killing Me Softly with his Song”の大ヒット。
「ギターを爪弾くように、あなたの指で私の心の痛みを爪弾いて」で始まるこの曲、実はドン・マクリーンのことを歌っていたのでした。彼のライヴを見て感激したロリ・リーバーマンという女性シンガーソングライターが歌詞の大筋を思いつき、テレビ、映画音楽を多く手がけているノーマン・ギンベル、チャールズ・フォックスのコンビ(他にジム・クロウチ” I Got a Name”、テレビショー「ラヴァーン&シャーリー」の音楽などを手がける)に持ち込んで、この曲ができた。オリジナルはリーバーマンが歌ったが、このテープをロバータ・フラックが飛行機の中で聞き、自分がぜひ歌いたい、と申し出て、あの大ヒットとなる。日本でも、コーヒーのコマーシャルに替え歌が長く使われていました。
最近、と言ってもこれまた10年前の96年、フージーズのカバーでお馴染みでしょう。この時、フージーズは、歌詞を「飢えが静かに私を殺す(killing me softly)」といった社会性を持った歌詞に変えようとしたところ、ギンベルとフォックスは拒否したという。
この他に、故ペリー・コモの代表曲となっており、プレスリーのカバーも有名な ”And I Love You So”もドン・マクリーン作だった。
70年代半ばにはスランプ期を迎えますが、80年に復活します。その時は自作曲でなく、ロィ・オービソンのカバー”Crying”でイギリスで火がつき、アメリカにも飛び火した。そのフォローアップも”Since I Don’t Have You”という、1958年のスカイライナーズというドゥ・ワップ・グループの名曲だった。この曲はブライアン・セッツァーやガンズ・ン・ローゼズも演ってます。
そんなドン・マクリーンの、自殺してしまうゴッホを描いた内省的な曲をカバーしたリック・アストリー。意外なカバーの取り合わせですが、これを含んだ再出発アルバム自体がカバーオンリーだという。調べてみると、さっき話題にした同じドン・マクリーンの”And I Love You So”も歌ってる。”Where Do I Begin”という曲も見受けられ、僕は試聴したわけではないので間違っているかもしれませんが、これは恐らくヘンリー・マンシーニ作、アンディ・ウィリアムスの歌で有名な「ある愛の詩」のテーマですね。”Cry Me a River”というのもあり、これには同名異曲がかなりあり、最近ではジャスティン・ティンバーレイクのものがありますが、リックが取り上げたのは雰囲気からするとジュリー・ロンドンのスタンダードのほうでしょう。他に”Close to You”, ”Make It Easy on Yourself”, ”What the World Needs Now”と、バカラックのナンバーも並んでる。プレスリーの「愛さずにはいられない」もあります。
リックのイメチェン、どう受けとられるのでしょうか。
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コメント
やさしく歌って がドン・マクリーンのことを歌ってたんですかぁ!
ここって勉強になります♪
投稿: senri | 2006年6月18日 (日) 14時50分
はじめまして。TBいただきありがとうございます!
今も昔もRickファンの三十路女です。
彼がデビューしたとき、この人はきっと、SAWサウンドよりも往年のスタンダードナンバーが歌いたいんだろうな~と子供心に思っていたのですが、今回やっと念願が叶ったという感じですね。
これからも末長くよろしくお願いいたしますm(_ _)m
投稿: ろ妃江 | 2006年6月19日 (月) 09時36分
Senriさま
コメントTBありがとうございます。
勉強なんてとんでもない(でも本職は教師なのですが)。でも何かお役に立てる部分があったらどんどん使ってください。
ろ妃江さま
こちらこそよろしくお願い申し上げます。勝手に繋いですみません。
デビューした時にスタンダード思考を感じるとは先見の明ですね。本文中にも書きましたが僕にはまったく意外な取り合わせとしか思えませんでした。ロッド・スチュアートなんかがやってる、スタンダード、ジャズへの回帰企画の一環とも取れるのですが、リックの場合、ちょっとセールス的にブランクがあるので企画モノでは勝負できず、本気のイメチェンだと思えたわけです。
投稿: Prof.Harry | 2006年6月19日 (月) 16時35分