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2006年6月 8日 (木)

Atlantic Crossing

おお、久々に物騒ではない清清しいタイトルだ。

64日のベストヒットUSAのタイムマシーンのコーナーではナック「マイ・シャローナ」、ブロンディ「コール・ミー」が立て続けに流れました。Knack_get_the_knack

ナックは、79年夏、克也さんの「ポップタウンエキスプレス」という月金帯番組(本人も忘れてるかもしれない)でほとんど毎日かかってた思い出があります。


Blondie_paralell_lines

ブロンディは、二回前にも書いたように、新たにトッド・ラングレンを迎えた新生カーズと一緒に全米ツアー中。


この二組を繋げるのは、番組の中でもおっしゃっていた、マイク・チャップマンという男。Exile_greatest_hits_Nick_guilder_city_nights

先般の拙稿に対して克也さんがコメントを下さっていた通り、プロデューサーとして78年にエグザイル”Kiss You All Over”、ニック・ギルダー”Hot Child in the City”と立て続けにナンバー1ヒットを出し、79年もナックや、ブロンディの「恋の水平線」というアルバムをプロデュースして、その後も時代のリズムを作っていった人。

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2006/02/happy_together.html

カタカナ表記だと、同じ時代の大事件、ジョン殺害犯と一字違いになってしまい、損してるんじゃないかなあと思ってました。Sweet_the_best_ofSuzi_quatro_back_to_the_driveSmokie_the_best_of

オーストラリア生まれの彼は70年代にイギリスで仕事を始め、Sweet, Mud,あとスージー・クワトロなんていうグラムロックの生き残り、あとソフトなところではSmokieなんていうグループを手がける。そういえばこのスモーキーのリードシンガー、クリス・ノーマンとスージー・クワトロという異色の組み合わせのデュエットヒット曲で “Stumbling In”というのがあったけど、こうして考えてみるとこの二人を会わせたのはマイク・チャップマンだったんだなあ。

このような、プロデューサーなどの裏方さんにこだわってみることも、音楽パラノイアの醍醐味であるわけですが。

今回もう一人話題にしたい裏方さんは、Tom Dowd

彼に関して、伝記映画「トム・ダウド-「いとしのレイラ」をミックスした男」を観てきたばかりですので、リポートしたいと思います。

東京圏在住の、小生の親戚筋に当たる音楽パラノイアの諸兄姉におかれましては、何を寝ボケた事を言ってる?そんな映画もう4月にやってとっくに終わってるぞ!とおっしゃるかもしれませんが。それが地方都市の悲しさでして。名古屋では今、しかも一週間だけやっているんです。近隣ではまったく上映されない更に不便な場所もあるかもしれません。遅くとも観られる。幸せです。

このトム・ダウドという人の名前は、僕がレコードを最初に買い出した頃から名前をよく観ていて憶えていて、その後音楽には待っていくうちにますますいろいろなところで名前に出くわし、すごい人だとは思っていましたが、この映画を観て、想定していた以上にすごい人だったのだなあ、と感慨を新たにしました。

異聞でしたが、1925年、音楽一家生まれの彼は、大学で物理学を専攻し、なんと、原子爆弾を最初に研究開発した「マンハッタン計画」に下っ端の研究者として参加していたという。

1940年代から機械と音楽の知識を生かし録音業に携わるようになり、全ての楽器の演奏をマイク一つで一発録りするのが当たり前だった時代に、一つ一つの楽器の前に別にマイクを立てて、8トラック多重録音の走りを始めたのは彼だという。Otis_redding_the_very_best_ofAretha_franklin_the_best_of

アトランティックレコードを中心に活動し、レイ・チャールズ、MJQ,ジョン・コルトレーンといったジャズの大物の録音のエンジニアリングに始まり、50年代から60年代にかけてはコースターズ、ドリフターズ、ベン・E・キング、オーティス・レディング、アレサ・フランクリンといったアトランティックソウルの名盤の録音にほとんど係わることになる。Cream_the_very_best_of

ロックにも係わり始めた。彼は技術屋だけではなく、あらゆる音楽に精通していて、ある曲のほんの人フレーズを聞かせただけで全て言い当てられたという。クラプトンとの親交も始まり、クリーム “Sunshine of Your Love”のドラムスはアフリカのリズムを取り入れようと提案したのはトムだった。Allman_brothers_band_at_the_fillmore_eas

Mから始まる地名に縁のある彼は、マンハッタン、マイアミから70年代にはサザンロックのメッカだったジョージア州メイコンにも移り、オールマン・ブラザース・バンドなどとも仕事をする。当時ブルースやサザンロックに傾倒していたクラプトンを、レコーディング場所が一緒だったからとデュアン・オールマンに引き合わせたのもトムだった。彼がいなければ、デレク&ドミノスのあの布陣もなかったんだ。Derek_the_dominos_layla

僕はこの映画の日本タイトルは、「いとしのレイラ」は日本でよく知られていてアイキャッチャーになるからつけられたのであって、トムにとって「レイラ」は最高の仕事ではない、もっと他にある、と思っていましたが、映画を観て、予想以上に大きな仕事だったのだなと思いました。録音からほぼ30年経って、当時の音源からミックスダウンを実演するのがこの映画のハイライトになっています。天才ギタリスト二人がツインでリード、リズムギターごちゃ混ぜに絡み合い、これにドラムス、ピアノも絡むあの多様なトラックを一つにまとめるのは、やっぱりトムの技術と勘あったればこそ可能だったのでした。Lynard_skynard_essential

やはりトムがプロデュースしたレイナード・スキナード「フリーバード」の最後の、テンポが速くなってギター、ピアノソロになっていく部分もモデルになったのは「レイラ」でした。



Rod_stewart_atlantic_crossing_1Chicago_13

その後もミート・ローフ、ファイアフォール、シカゴなども手がけます。ロッド・スチュアートの70年代後半の最も乗っていた時期の一連の作品も担当し、その中に75年の、「セイリング」を含むAtlantic Crossingがあります。大西洋横断、という意味ですが、アトランティックレコードとともに歩んできたトムを一言で表すにもぴったりのタイトルです。

最近のものでは、やはり同日のベストヒットUSAにも登場したPrimal Screamもやっていました。2002年に他界してしまいましたが、最後まで、最新の録音技術をも貪欲に吸収した現役であり続けました。

この映画一本観るだけで、ロック、ソウル、そして録音技術の歴史に相当精通できます。まだこれから封切られる地域の方々にも、それからDVDになることがあったら、お勧め。

マイク、トムを含め、僕たちに名盤を届けてくれる全ての裏方さんたちに乾杯!

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コメント

お久しぶりです。

>「ポップタウンエキスプレス」という月金帯番組

記事の本線とは違うところに反応して申し訳ありませんが、ず~っと番組名が思い出せずに、お尋ねしたかったのが、このラジオ番組のことでした。スッキリしました。

僕が初めて聴いた小林さんのラジオ番組で、洋楽に目覚めるきかっけでしたし、ここで盛んにオンエアされていたブロンディの「Sunday Girl」が大好きになって、初めて購入した洋楽アルバムがブロンディだったのです。

「ステレオマック・ムウ」という、ナショナルのLEDレベルメータの走りだったラジカセで、毎夜この番組聴いてました。

投稿: heavytopper | 2006年8月15日 (火) 21時19分

heavytopper様、コメント、トラックバックありがとうございます。
30分の月金帯番組で、文化放送が制作、東京では夜8時ごろやっていました。地方各局では放送時間は様々だったでしょう。78年3月まで、「土居まさるのポップス・ナンバーワン」という番組をやっていて、それを克也さんが引き継ぐ形で、まず1年間「ポップ・イン・ポップス」という番組で、79年4月から「ポップタウンエキスプレス」になったと記憶しています。

投稿: Prof.Harry | 2006年8月16日 (水) 23時27分

おはよ~ございます&TBありがとうございます。
「小林克也のRadioBaka」  期限...さんが、Prof Harryさんだってことに、最近気が付きました^^ゞ
大変失礼しました(ペコ)m(__)m(リン)
もう大丈夫ですから(笑)、これからもよろしくお願いします。

投稿: shige | 2006年8月29日 (火) 08時53分

Shigeさん、コメントトラックバックありがとうございます。
そうですね、ブログ名にハンドルが反映されていないとわかりにくいのかもしれません。僕のせいもあるし、このニフティのせいもあるかもしれないし。。。御気になさらないでください。
「ホテル・カリフォルニア」のイントロは試してみられましたか?

投稿: Prof.Harry | 2006年8月29日 (火) 18時12分

今晩は Prof.Harryさん ずい分 内容が豊富で びっくりしました!!映画「トム・ダウド」は ただ今 交際中の メル彼Gさんと
大阪の十三の第七芸術劇場という 映画館で 見に行きました。
その彼に 「イート・ア・ピーチ」クラプトンの「DELUXE EDITION」というアルバムをダウンロードしたCDを プレゼントされました。
めちゃ 嬉しかったです。クラプトンは 来日しますよね。3年前も
大阪城ホールへ見に行きました。今度は 姉と一緒に行きます。
Gさんも お姉さんと 一緒で 日にちは ずれてます。

投稿: 和登さん | 2006年8月31日 (木) 20時18分

「ポップタウンエキスプレス」なつかしー!!
中学生時代に、この番組でアニタ・ワード「リング・マイ・ベル」をリクエストして、ハガキを読んでもらいました。番組名は「ポップインポップス」かなと思っていたのでが、「ポップタウンエキスプレス」ですねー。
自分のブログからリンク&TBさせていただきました。よろしくお願いします。
http://nyanc.blog76.fc2.com/blog-entry-55.html

投稿: にゃんこ | 2006年10月28日 (土) 00時14分

にゃんこさん、来訪コメントTBありがとうございます。
「ポップタウンエクスプレス」を憶えていて感謝されたのはこれで二度目です。「ポップインポップス」は憶えていても「エクスプレス」まで浮かんでくる人はなかなかいらっしゃらないようですね。
こちらからも関連記事にトラックバックさせていただきました。よろしくお願いします

投稿: Prof.Harry | 2006年10月29日 (日) 01時00分

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