CRY
11月26日のベストヒットのタイムマシーン(またか!?)、1976年に10㏄からケヴィン・ゴドレイとロル・クレームが脱退した日で、この二人は80年代に音楽ビデオ制作に大活躍するので、その代表作の一つ、ポリス「見つめていたい」がかかりました。
本当はゴドレイ&クレーム「クライ」が彼ら自身の曲でもあるし、映像としても彼らの最高傑作だと思うんですけど。これは約一年前に既に放送されているんですね。実は、読まれはしなかったけれど僕のしつこく出したリクエストが採用されたんじゃないかと思っています。その前に、まだベストヒットが事務所が作っていた地道な地方局向けシンジケート30分番組だった頃の98年年末のリクエスト特集でも採用してもらったことがあります。このときは読まれました。それくらい好きなビデオなんですね。
この10cc、すごいグループでした。
四人のメンバーがいて、四人ともいろいろな楽器の演奏ができて、ヴォーカルも取れて、曲も作れて、後には映像にも才能を発揮する。
エリック・スチュアート。彼は60年代は”The Game of Love”や、フィル・コリンズのカバーでお馴染みの “Groovy Kind of Love”なんかをヒットさせたマンチェスターのWayne Fontana &the Mindbendersにいました。こちら。
グラハム・グールドマン。同じ時代に既にソングライターとして地位を確立していた人で、日本でもヒットしたホリーズの「バスストップ」、他に”Look Through Any Window”、ヤードバーズの「フォー・ユア・ラヴ」(クラプトンはこういう曲を演るのが嫌でヤードバーズを抜けた)、他にハーマンズ・ハーミッツのヒット曲なんかを書いていた。
グールドマンとゴドレイは同級生で、十代の頃モッキンバーズというバンドで一緒に演奏し、ゴドレイと他のバンドで一緒に演っていたクレームも加わった。
最初は、スチュアート、ゴドレイ、クレームというメンバーでホットレッグスというバンドが結成され、”Neanderthal Man”「ネアンデルタール人」というヒット曲が生まれました。原始人っぽいチャントとリズムにビートルズの”A Day in the Life”の大仰な展開が取り入れられている、なんともいえない曲です。
これにグールドマンが加わり10㏄に。平均的男性が一日に分泌するあの液の量、をバンド名にしちゃったという説もありますが、実際はマネージャーが、世界ナンバー1のロックバンドの夢を見て、それがなぜかそういう名前だった、というのが本当の由来だとか。あの液の平均分泌量は実際はもっと少ない?
音楽性が多様で、シュールな芸術性もあればフランク・ザッパ的なグロ、ユーモアも持ち合わせている不思議なバンドでした。
ビートルズの「オー・ダーリン」をモチーフにしたドゥ・ワップの「ドナ」とか。
イギリスでの最初のナンバー1は”Rubber Bullets”という、「監獄ロック」のパロディみたいな曲で。
それで何といっても74年から75年にかけての「アイム・ノット・イン・ラヴ」の世界的ヒットが代表曲になるわけですが。
その後のシンセサイザーブームの先駆けになったような、美しい荘厳な曲ですが。
「君の写真を壁にかけてあるけど、汚いシミを隠したいからそうしてるだけで、別に君のこと好きなわけじゃないよ」
「夜中に電話したけど、君を愛してないってことを確認したいだけだから、騒がないでね」
「静かにして、大きな男の子は泣くもんじゃない(Be quiet, big boys don’t cry)」
などなど、結局この人は相手を本当は好きなのか嫌いなのか、はたまた男から女に言っているのかその逆なのか、いろいろな解釈ができて謎の多い曲です。
そしてその後、そのゴドレイとクレームが抜けてしまって、スチュアートとグールドマンの二人になってしまった10㏄は、ポール・マッカートニーが書いたって言ってもほとんどの人が信じてしまうくらいクリソツな “The Things We Do for Love”「愛ゆえに」とか、レゲエに挑戦した”Dreadlock Holiday”なんてヒット曲を出しますが。
80年頃解散状態に。その後スチュアートはポール・マッカートニーの80年代前半期のソロ活動、”Tug of War”, “Pipes of Peace”あたりを全面的に支え、グールドマンは、”Lonely Boy”のヒットを持つ西海岸のシンガーソングライター、アンドリュー・ゴールドとWAXというユニットを結成、ウェストコーストサウンドとブリットポップの融合を目指します。
同じ頃、ゴドレイとクレームはデュオを結成、同時に映像も手がけるようになります。
その85年の最大のヒット曲「クライ」は、モノクロ、ワンショットで、老若男女数十人の人が登場してひたすら口パクで唄って、その顔がモーフィングでどんどん推移していくという技モノでした。まだCG技術がそれほど発達していない頃なので、人の顔がどんどん変わっていくのは画期的でした。
数年後、マイケル・ジャクソンが”Black and White”のビデオでCG技術を使って同じことをやります。
その他にも、ゴドレイ&クレーム自身の”Englishman in New York”(スティングとは同名異曲)ではマネキンのオーケストラが出てきたり。
他のアーティストのビデオでもシュールな映像を多数作ります。
ポリス「見つめていたい」は、モノクロですが、青や赤のバージョンもありましたね。
他に同じ「シンクロニシティ」のアルバムから”Wrapped Around Your Finger”では何百本もの蝋燭を立てて。
デュランデュラン”Girls on Film”では裸の女の子にドロレスをやらせる。
エイジア「ヒート・オヴ・ザ・モーメント」では画面を16分割して左上から右下に、歌詞に合わせてどんどんシーンを変えていく。
ワン・チャン“Everybody Have Fun Tonight”では、かなり前だけどポケモンのテレビで使われて子供たちの視力絵の影響が問題になったフラッシュ効果が使われていた。
フランキー・ゴース・トゥ・ハリウッド”Two Tribes”では、レーガン大統領とチェルネンコ書記長のマスクを被った二人が衆人環視の中で殴りあい、最後は地球が爆発する。ジョージ・ハリソン“When We Was Fab”。ジョージの手が何本にも別れ、ギターを弾きながらまりつきをしたり長く伸びたピアノを弾いたり、最後にはジョージが空中浮揚して上半身がいくつにも分かれていく。
他にもハービー・ハンコック「ロッキット」、ビートルズ「フリー・アズ・ア・バード」などなど印象的なものをいっぱい残しています。
音楽的にもすごい功績を残した人たち。映像面でもこの通りすごかった。
40周年を迎えた円谷プロのウルトラマンシリーズ。その創世記から今尚メガフォンを取られている、知る人ぞ知る実相寺昭雄さんという監督がいらっしゃいますが。
下斜めのアングルから取ったり、輪郭や色をぼかしたり、ナイフに写った光る目とか、宇宙人をアパートの和室に上げて胡坐をかかせるとか、シュールな絵を取る人。
ゴドレイ&クレームの映像は、実相寺さんと同じタッチを感じるんです。
ウルトラマンファンでもあるハリー教授でした。
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コメント
こんばんわw
トラバありがとうございます!
さて、10cc。
そんなにすごいバンドだったとは露知らず…でも、とっても勉強になりました!ありがとうございます!
また、伺わせていただきますね~⌒☆
投稿: mika-rin | 2007年2月 9日 (金) 21時47分
みかりんさん、こめんとありがとうございます。
KINTAさんのところから飛びました。勝手につないですみません。ただ楽しめばいいのに、小難しいことをいろいろ書いていますが、よろしくお願いいたします。
投稿: Prof.Harry | 2007年2月10日 (土) 14時45分