« Every Kinda People | トップページ | (You Can Still) Rock in America! »

2007年6月 7日 (木)

Love and Happiness

このコラムコーナーには似つかわしくないタイトルか。いや、いつでも世界に広まることを願っています。

 映画レポートですが、ちょっと異例。

 東京でも同様のことをやっていたらしいのですが、ルーツミュージックのドキュメンタリー映画を数本そろえて、数日ずつ連続で公開する企画があって、そのうちの一つに先週、たまたま行ってきました。たった3日間だけの公開でしたし、他の地域でこれからやるかどうかもわかりませんから、参考にはなりません。

 しかし興味があればDVDでは見ることはできるみたいです。僕も行くまで知りませんでしたが、なんと1984年、23年前の映画でした。私も当時は可愛い(?)学生でしたから、このアーティストのことは知っていても映画があるなんて全然知りませんでした。そもそも日本で公開されたことがあるんだろうか。

Al_green_gospel_according_to  映画は「アル・グリーン」。原題は”Al Green talks about his Gospel”「アル・グリーン、彼のゴスペルを語る」でしょうか。

 ティナ・ターナーやその他大勢のアーティストがカバーした”Let’s Stay Together”のオリジナルを歌っていた人。70年代前半にはいっぱいヒットを飛ばしていました。マーヴィン・ゲイのセクシーさと、スモーキー・ロビンソンのソフトさと、ウィルソン・ピケットの

Al_green_lets_stay_together_2 ワイルドさを併せ持っていた不世出のR&Bシンガー(これは映画の中にあった証言の引用)。

 全盛期に牧師になるといって表舞台から突如姿を消した彼ですが、そんな彼の自伝映画、というか宗教活動宣伝映画でした。

 ハイ・レコードという、メンフィスを拠点にサザン・ソウルの中心だったスタックス・レコードが衰退し始めた頃に、取って代わるように台頭してきたレーベルがあって、そこの元締めだったウィリアム・ミッチェルに、声を認められてレコード・デビュー。「君は二年の間にスターになれる」といわれてもグリーンは「二年も長すぎて待てないよ」といっていったんは断ったとか。

Al_green_im_still_in_love_withyou  最初の大ヒット曲、”Tired of Being Alone”は、当時の恋人に会えないこと経験を歌っていて、その女の子にもミッチェルにも好かれなかった曲だが、アルだけ気に入り、地道に歌い続けて人気が出た。

 そして72年の”Let’s Stay Together”のナンバー1ヒット、73年にかけて、I’m Still in Love with You,” “ Call Me” とか、連続トップ10ヒットを放って不動のR&Bシンガーの地位を手にしたかに見えた。”Love and Happiness”もその頃の曲です。

Al_green_call_me その絶頂期にあった73年、ツアーで西海岸にいた夜、中西部にいたガールフレンド(さっきの女性とは別人らしい)を呼び寄せようとしたら、飛行機が嵐で到着が遅れた。そのとき彼は突然、神の啓示を受けて宗教に生きる決心をしたという。このあたり、現ブッシュ大統領がアル中だったのがある夜突然神に目覚めた、という、結局は事実ではないらしいのですが、広まって信じられているエピソードと似ています。

Al_green_belle_album  その後は直ぐにサウスキャロライナに土地を買って教会を立てて牧師となる。

 僕がナマで動く彼をテレビで見た記憶があるのは、78年、赤坂局が当時、毎年の恒例行事としてやっていた東京音楽祭に「愛しのベル」という曲で出場したときでした。そのころはすでにヒットチャートの常連ではなくなっており、その後ぴたっとレコードも出さなくなるのですが、既に人生を変える決心をしていたのでした。

 その後の映画は、延々と30分近く、彼の説教が見せられます。

 黒人南部福音派の教会は独特の雰囲気があります。僕も見学させてもらったことがありますし、他の映画のシーンなんかでも見た方は多いのではないでしょうか。「エーメン」の掛け声が信者から不規則に飛んできたり、陶酔して失神する信者がいたり。

 「イエスは水をワインに変えました、イエスは血をワインに変えました。イエスに不可能なことなどないのです」

 アルはこれを、バンドを従えて(教会にバンドがいること自体は珍しくないみたいですが)時々ドラムブレイクを入れさせたりして、説教とも唱ともとれる、流れるような、かつ迫力ある語り口で信者たちに語りかけていきます。

 元フィフス・ディメンションのビリー・デーヴィスJr,や、M.C.ハマーなど、ヒットを出した後ゴスペルに行ったり、神に帰依したりする黒人アーティストは少なくありません。物質主義から本当の「愛と幸福」への精神へと導かれるのでしょうか。

 アル・グリーンはその後、音楽の世界に少しだけ戻り、90年代になってユーリズミックスのアン・レノックスとのデュエットで”Put a Little Love in Your Heart”をヒットさせたり、オリジナルアルバムを20年以上のブランクを経て出したりしましたが、やはり宗教活動を中心においているようです。

 アングラの劇場で、見ていたのは僕を含めて6人だけでしたが。

アル・グリーンを憶えている人にはぜひ見てもらいたい。南部黒人教会の雰囲気を知るにもいい機会になる映画です。

|

« Every Kinda People | トップページ | (You Can Still) Rock in America! »

70年代」カテゴリの記事

ソウル・R&B」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

おはようございます!
TBありがとうございます。
アル・グリーンのこと、あまり知りませんでしたが
牧師になられたのですね。

R&Bとゴスペルは切り離せないですが、愛の苦悩を歌っているのが私にフィットします。

投稿: まり | 2008年12月 8日 (月) 07時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80310/9618375

この記事へのトラックバック一覧です: Love and Happiness:

« Every Kinda People | トップページ | (You Can Still) Rock in America! »