Same Old Lang Syne
クリスマス特番おつかれさまでした。
子供の相手もしなければならなかったし(選曲もNHK的に普通だと思ってしまったので)全ては聴けませんでした。すみません。
克也さんが番組内でおっしゃっていた、「世界が宗教だなんだで争っている現在、日本の、盆も正月もクリスマスもバレンタインも一緒に盛り上がる無宗教性、よく言えば縁起物ならなんでも受け入れる度量の大きさ、悪く言えばいい加減さは、今の世界に新しいモデルとしてもっと発信してもいいんじゃないか」という発言、あれは私の、911同時多発テロのあった2001年のクリスマスの時期の番組への投稿ネタですね。あの時のZIP HOT 100のオープニングトークでは、街のクリスマスの盛り上がりに、日本には元来関係ないお祭りのはず、騒ぎすぎ、みたいなことをおっしゃって(私も実はその部分には賛成なのですが)、それへの反論として書いた覚えがありますから、小生の考え方に同調してくださったのですね。光栄です。
前回、亡くなってしまったアイク・ターナーに関する徒然を綴り、そうしている瞬間にもまた惜しまれるアーティストの訃報が届いた、と書きましたが、やはりその人に関して一言申し上げて、本年最後のお勤めとさせていただきましょう。
ダン・フォーゲルバーグ。12月16日逝去。享年51歳。若すぎる。
1956年イリノイ州ピオリア生まれ。
ちなみに話は全く外れますが、このピオリアという町だか村だか、何もないところなんですけど、なぜか最もアメリカらしい平均的な町の代表格として会話に用いられることがあります。
1973年、ウォーターゲート疑惑の真っ最中。ニクソン大統領は大統領執務室での会話を全て録音しており、それが大陪審の命令により、ニクソンが大統領特権で拒否した部分を除いて部分的に公開されました。その中でニクソンがこのピオリアという町の名前をやたら出していました。私がこういう発言をしたり、こういう政策を発表したらピオリアの人たちはどう思うだろうか、云々。
当時、A新聞ワシントン特派員だった筑紫哲也さん。いったいこの町に何があるんだろうと思って地図を広げて探してみたら、シカゴの近くにある何の変哲もなさそうな町。意外な感じもしたが、それでもニクソンがそれだけ言うのだからきっと何かあるに違いないと思い、ある日思い立って行ってみたら、やっぱり小麦畑しかないなんてことのないところだった。
結局のところ、大家族、農業、信仰心の深さなど古き良き時代の典型的なアメリカのライフスタイルを残していて、最も平均的でつまらない場所、しかし政治的には面積は広く人口も多く無視はできない中西部という地域を、何かのきっかけでこのピオリアという町がアメリカ英語で代表するようになったのではないか、ということでした。
筑紫さんも早くもっと元気になって完全復帰してくださいね。
閑話休題。
その最も平均的にアメリカ的な町で生まれたダンは、一言で言えば、男性版ジョニ・ミッチェル、とでも言ったらいいようなアーティストに成長しました。
彼は先ず画家を目指し、イリノイ大学に行っても絵画を専攻します。ミュージシャンになった後もアルバムの表ジャケ、裏ジャケ、中ジャケのどこかには彼自身が描いた絵を見ることができた。これもジョニそっくり。
しかし同時に、ギターを中心に、ピアノも、ヴォーカルも出来るマルチプレイヤーとしても才能を発揮し、大学時代から音楽活動を始めます。しかも叙情的で内政的な詩を多く書く。
72年のデビューアルバム「ホームフリー」は、ローリングストーン誌のレビューで「まるで一人でクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(CSN&Y)をやっているようだ」と絶賛されました。
それはまだ彼が10代の頃に書いた曲の数々だったはず、ところが、例えばそのデビューアルバムの最後の収録曲「リバー」など、「僕の人生は心の痛みで流れる涙の川」なんてリフレインが続く、まるでこれから死んでしまうような、既にベテランの域に達していたような音作りでした。
74年の二枚目のアルバム「アメリカの思い出」はまだイーグルスに加わる前のジョー・ウォルシュがプロデュース、ドン・ヘンリーやグレン・フライ、アメリカのジェリー・べックリー、そしてそのCSN&Yのグラハム・ナッシュなど有名どころがゲスト参加するようになり、「パート・オヴ・ザ・プラン」という最初のヒットも出て、西海岸サウンドを担うシンガーソングライターの一人として認められました。
78年には、ジャズフルート奏者のティム・ワイズバーグとの競演で、収録曲がほとんどインストロメンタルで、ウエストコーストロックとジャズの融合を目指した斬新なアルバムを発表します。タイトルがTwin Sons of Different Mothers(異母双生児)だって。ちなみにこの二人はその20年後にその続編のアルバムを発表しますが、その時のタイトルはNo Resemblance Whatsoever(顔は全く似ていない)で、笑ってしまいました。結構、二人とも馬面で似ていたのですが。更にちなみにやっぱりこの二人、名前からしてユダヤ系つながりだったんでしょうね。
日本で何かのテレビCMに使われた「ロンガー」、79年の「フェニックス」というアルバムから、そして81年の二枚組「イノセント・エイジ」あたりから大ヒットを連発するようになり、地位を不動のものとします。
「一歩間違えればさだまさし」と言った人がいるとかいないとか。アコースティックギターを基調とする、フォークロックが中心、それでも美しさの中に時に力強さも感じさせる、最後までスタイルを買えずに貫いた人でした。ライフスタイルも都会を嫌い、普段はコロラドの田舎にずっと引っ込んでいた人でした。環境保全や、原住民(インディアンですね)の文化の保護に関しても活動していました。
それでも、84年、「ランゲージ・オヴ・ラヴ」という曲で初めてビデオクリップを作って、ベストヒットで流れたときにはびっくりしました。彼はそういうことはやらないと思ってた。時代には勝てなかったのでしょう。
15年前にライヴを記録したDVDの中のインタで、「20年後も僕は変わっていないと思う。音楽と自然を愛せたことに感謝したい」と言っていた彼、その20年後を見ずに逝ってしまいましたが、その言葉通りの人生でした。
Same Old Lang Syne「懐かしき恋人の歌」。そのイノセント・エイジから、彼にとっては「ロンガー」に次ぐ大ヒットでした。クリスマスイブに偶然昔の恋人と再会した、今は成功したミュージシャンの歌。おそらく彼の実体験でしょう。曲の最後に、トム・スコットのサックスソロで「蛍の光」のメロディが流れます。年末に発売されましたが単なるクリスマスソングの枠を超えたヒットになりました。「蛍の光」は Auld Lang Syne, 今の英語に直すとold long agoということで、そして、いつもながらの、という same old…を引っ掛けたタイトルになっています。
また、「蛍の光」の時期です。
克也さんご自身と並んでこのコーナーの最古参、この場を借りてこの言葉を言えるのが三回目。奇跡的に思えます。今年は自分も体調を崩して(ネタにも困って)穴を開けることもありましたが、お許しのいただける限りがんばりたいと思います。
「皆様、よいお年を!」
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