(You Make Me Feel Like)A Natural Woman
実は、時系列的にはこの前にもうひとつ大きなコンサートに行っていて、物の順序からすればそこからリポートするべきなんでしょうが。
12月9日のベストヒット、スター・オヴ・ザ・ウィークのゲストに合わせて、キャロル・キングのリポートを先に回しましょう。
「私の居間へようこそ」”Welcome to
My Living Room”ツアー、私も行ってまいりました。
以前にTOTO+ボズ・スキャッグスを観たような例のハコモノ国際会議場が会場だったのですが、会場の大きさに不釣合いな、彼女のピアノ、あとアコースティックギターが二人、シンプルな編成で、薄暗い照明、小道具でソファや観葉植物などを置く、まさにマンションの一室、彼女の居間を再現したようなステージ上でした。これはベストヒットで流れた映像のとおりです。
私の席番号は、なんとミキサー席のもろ隣でした。前売りが思ったほどに捌けていなかったのか、開演直前に、席を一列ずつ前に移動してくださいとの指示が会場案内からありましたが、小生は、このような大きな会場の場合の「例の作戦」がありましたのでこの幸運は譲れず頑として動きませんでした。周囲の人は、なんと身勝手な奴だ、と思ったことでしょう。私も心が痛みます。でもこうして、その結果をちゃんと役に立てていることに免じてご海容願えれば幸甚です。
例の作戦とは、ステージまでいけない場合、客席側のスタッフと仲良くなって、セットリストを分けてもらうこと。スタッフさんだって、自分の近くに英語をわかってくれる観客がいると思うとほっとするみたいですよ。今回もちゃんとものにしました。それに沿ってライヴを振り返りましょう。
彼女がインタビューで言っていた、居間を再現するコンセプトは、ブッシュ政権を追い出して民主党政権を作る話し合いを始めたことから生まれた、というの、まんざら大袈裟でもないでしょう。彼女はニューヨーク生まれのユダヤ系。それにアメリカには直接民主制の伝統もある。町の小さな寄り合いの話し合いから、何か大きな運動が始まったりする。
インタビューでは民主党政権の誕生をかなり喜んでいた様子でしたけれど、ステージでは政治色は一切感じられませんでした。
1曲目の”…Long Ago…”は彼女の3枚目のソロアルバム、72年の”Music”からで、まさに昔の曲が中心の選曲でした。というか、インタビューでも、今は本を書くのに熱中している、なんて言ってましたけど、彼女は80年代後半から音楽的には恐ろしく寡作になってしまいますね。
それでも2曲目、正式には”Welcome to My Living Room”はまさにこのツアーコンセプトにあわせて書き下ろされた曲だし、3曲目”Now and …”は93年、第二次大戦中に選手が兵役で取られてメジャーリーグが中止になったことに反発し、野球好きの女の子たちが自分たちでプロ野球を作ったという実話を綴った、トム・ハンクス、マドンナなんかが出演していた映画「プリティリーグ(A League of Their Own)」の主題歌でした。
“…Roof”はドリフターズ(日本のあれじゃありませんよ)の63年の大ヒット、彼女も最初のソロアルバムでセルフカバーしています。
6曲目 “Where…”7曲目”Home Again”と、名盤、71年の「つづれおり」からのナンバーがぼちぼち出てきました。
ここでピアノに座って歌っていた彼女が立ち上がり、アコースティックギターにも誓え、三人が並びます。「イーグルスみたいなことをやりたかったのよ。ナッシュビルでは毎日、何人ものシンガーソングライターが一つのステージに集まって、交互に自分の歌を歌うのよ」といって、それまで地味にバックでギターを弾いていたゲリー・バーが二曲リードヴォーカルをとりました。
9曲目の”Love’s Been a Little Bit Hard on Me”は、ベストヒットの創成期、82年のジュース・ニュートンのヒット曲です。彼はその作者だったんですね。他にも彼は2001年のリッキー・マーティン、クリスティナ・アギレラのデュエットでヒットした”Nobody Wants to Be Lonely”の作者でもあります。そんな感じでしぶとく業界で生き残っている人、ナッシュビルに行けばいっぱいいるんでしょうね。バックコーラスをやっているキャロルは実に楽しそうでした。
そのままのポップなノリで10曲目”Smackwater Jack”へ。「つづれおり」で最も歯切れがよかった曲。
その次は最初の夫ジェリー・ゴーフィンとの大ヒットメドレーでしたが、私はちゃんと全部書き留めておきました。”Take Good Care of My Baby(Bobby Vee)~”It Might as well Rain until September”(62年、彼女自身)~”I’m into Something Good”(Herman’s Hermits)~”Go Away Little Girl” (Steve Lawrence, Donny Osmond)~”Hey Girl”(Freddie Scott)~”One Fine Day”(Ciffons)~”Will You Love Me Tomorrow?(Shirrells)
場所によって、メドレーの内容は変えているみたいです。60年代は、とにかく数え切れないヒット曲を作っていましたからね。改めて脱帽です。
ここで20分の休憩。
前半は黒い衣装でしたが、少しオレンジがかった色に変身してきました。
後半は、2001年、彼女自身8年ぶりだった”Love Makes…”の表題曲からスタートしました。
2曲目の”Sweet…”は”Music”から、そしてメドレーのように矢継ぎ早に、「つづれおり」からの彼女の代表曲”It’s Too Late”「心の炎も消え」。
これらの曲も含めて、この70年代前半の彼女のソングライティングのパートナーはToni Sternという女性で、女性二人で曲を作っていたわけで「つづれおり」の中にも女性の心の変化を題材にした曲が多い。社会的にも女性の進出が目立ち始めたころと一致しており、この”…Too Late”も「つづれおり」自体も、時代が違えばあれだけのヒットにはならなかっただろう、と彼女は回想しています。遅すぎなくてよかった?
4曲目の”Chains”は珍しくビートルズもカバーしている曲。70年代後半から彼女はレコードはコンスタントに出すのですがセールス的にはスランプの時期を迎えてしまいます。そんな中、80年に “Pearls”という、ゴーフィン-キング時代に他人に提供した曲のセルフカバーアルバムを出しますが、その中でも印象的な一曲でした。
5曲目”(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”は「つづれおり」のセルフカバーもいいですが、なんといってもアレサ・フランクリンですね。
「今晩、この後、SMAP☆SMAPに出演するから観てね」とMCが入りましたが、よほど近くに住んでいない限り無理ですね。僕でさえ40分かかるんだもの。
6曲目 “Pleasant…”は彼女自身のスタジオ録音はなく、最近のライヴでは好んで歌っているようです。モンキーズの大ヒット曲の一つ。
7曲目“…At War”は未発表作品で、まさに、最初に書いた、共和党政権を倒すために部屋に集まった、云々という話が本当に思えてくる、ベトナムの時代にはゴーフィンと明るいラブソングを中心に作っていた彼女の今になっての反戦歌に聞こえました。
そして、”I Feel the Earth Move”「空が落ちてくる」。「つづれおり」の中で、”…Too Late”との両A 面ヒット(懐かしい表現だなあ)に続きます。あなたと一緒にいると大地が動き空が落ちてくるのがわかる、という恋の衝撃の歌ですが、その反戦歌と繋げてちょっと違った響きを持たせながら、いったん引っ込みます。
アンコールは、”So…“「去り行く恋人」”You’ve Got a Friend”「君の友だち」と「つづれおり」の名曲二つのメドレー。後者はジェームス・テイラーのカバーでナンバー1ヒットになり、キャロルのレコードで彼はギター、バックヴォーカルで参加しています。今回はゲリー・バーがその役目を完全に果たしていました。前者は、96年、「つづれおり」へのトリビュートアルバムで、収録曲全部を別々のアーティストが独自の解釈で録音した”Tapestry Revisited”の中でのロッド・スチュアートのカバーがものすごくいいんですけれどね。
最後は”Locomotion”。Little Eva, Grand Funk、Kylie Minogueと3回もヒットし、彼女自身も“Pearls”で録音している。ただし今回はダンサブルでもロックっぽくもなく、彼女のピアノだけで割とゆったりめのアレンジで、「リトルエヴァでも憶えられるような簡単なABC」などど歌詞もいじっていました。
最盛期もあればスランプもあり、別のことに関心を持つこともある。そんな自然体の彼女の今を自然に表現しようとしたステージ、という感じでした。
彼女の半生をモデルにした「グレイス・オブ・マイ・ハート」という映画についても前に書いたことがありますので、ついでにどうぞ。
今年のことは、今年の中で終わらせたいけれど、無理そうだなあ。
とにかく、メリークリスマス!
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