ニール・ヤング

2006年9月22日 (金)

Southern Man

917日のベストヒットUSAは、克也さんニューヨーク取材モードで、最新チャート発表なしのタイムマシンスペシャル。

 そこで、というわけでは全然ないですが、ここでもちょっと、さらに一週間遡ります。Lynyrd_skynyrd_second_helping

910日のタイムマシンで、ギターのゲリー・ロッシントンが結婚式を挙げた日ということでかかったレイナードスキナードの「スィート・ホーム・アラバマ」。

 南部には違いありませんが、彼らのベースはフロリダで、アラバマは「彼らの家」ではありませんでした。でもこの曲でアラバマを歌ったのは、アラバマ州マッスルショールズに敬意を表すためでした。以前に紹介した「いとしのレイラをミックスした男」という映画(DVDが出たようです)の主人公トム・ダウドが活躍していて、録音スタジオがいっぱいあって、ロッド・スチュアートなどアトランティックレコードのアーティスト、サザンソウル、サザンロックの連中が多く使ってた場所で、レイナードスキナードも当然そこで録音して、トム・ダウドの世話になったのでした。

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2006/06/atlantic_crossi.html

 歌詞訳テロップにこんなのが出てきました。

 「ニール・ヤングが南部をコケにした

  ニール・ヤングよ、覚えとけ

  南部人は二度とお前なんか相手にしない」

Neil_young_after_the_gold_rush克也さんの解説もあったように、これはニール・ヤングの72年の名盤「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」のなかのSouthern Manという曲へのアンサーソングでもあったわけです。

 「南部人よ 忘れるな

  南部に関する本に書いてある

  南部に変化がついに訪れるのだ

  十字架がやかれている

  綿、黒人

  白く大きな邸宅とみずぼらしい丸太小屋

  南部人よ、いつになったら彼らに借りを返す?

  絶叫が聞こえた、鞭でたたかれる音も」

南部の奴隷制の名残りと、人種差別でテロを行う秘密結社クー・クラックス・クランを連想させる歌詞と捉えられたわけです。

Neil_young_harvestニール・ヤングにはもう一曲、73年のまたまた名盤「ハーヴェスト」のなかの「アラバマ」という曲の歌詞にもやはり人種リンチを連想させる部分があり、「スィート・ホーム・・・」はこれらに対するアンサーだったのでした。

 ところが、彼らがどうヤングの曲に答えたのかに関しては、解釈が二分されています。

 まず、南部はこの人種差別や保守性も含めて独自の文化を捨てない、ニール・ヤング、余計なお世話だ、ほっとけ、といったという解釈。これのほうがわかりやすい。

 「スィート・ホーム・・・」で続く歌詞に「バーミンガムではみんな知事を愛してる」とありました。

 当時アラバマ州の知事はジョージ・ウォーレスという人でした。「人種差別の伝統よ永遠なれ」といった過激なスローガンで出てきた人で、大統領選挙にも二度立候補し、南部諸州から絶大な支持を得ていた人でした。その人を讃えていた。

 また、ビデオでもあったとおり、南部連合の旗をバックスクリーンに映し、実際に旗をまとって歌うのが彼らのスタイルになっている。南北戦争のとき、奴隷制を守るためにアメリカ合衆国から離脱し別の合衆国を作ろうとした南部11州の連合の旗は、今でも人種差別の象徴として受け取られる場合があります(映画「評決のとき」参照)。

 ところがもう一つの解釈として、南部人としての誇りを貫くという点では同じだけれども、ヤングは不当に南部を遅れた地域だと誤解している、それでお前なんかイモだ、と言っている説があります。

 この解釈をとる人は「スィート・ホーム・・・」の歌詞のさっきの「知事を愛している」の後に、「ブー、ブー、ブー」というコーラスが続いていることに注目しています。これは、ウォーレス知事と、人種がらみの殺人事件のあったバーミンガムにブーイングを送っているのだ、という。

 また南部連合の旗にしても、あれはアトランティックレコード側から指示があった演出で、それが一人歩きしちゃったけれど、彼らにしてみれば特別な思い入れはないのだという。

 それでも、前の、人種問題を含めた南部の誇り説、のほうが自然だし、その解釈を取る人のほうが多い。

 このレイナードスキナード対ニール・ヤングの二分法は、二年前の大統領選挙でのブッシュ対ケリーの二項対立のときにも大いに想起されました。 

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2005/12/jesusland.html

でも実は、レイナードスキナードとニール・ヤングは仲がよく、互いに音楽面で尊敬しあっているのだという。

これは、この論争が始まった70年代からそうだった。

ボーカルのロニー・ヴァンザントはニール・ヤングのTシャツを着てステージに立ったことがある。

Neil_young_rust_never_sleepsヤングは後にレイナードスキナードにPowderfingerという曲を提供した。

レイナードスキナードも人種問題について発言したことはないし、ニールも南部の二面性、多様性については十分理解しているという。

これも依然書きましたし、克也さんも言っていましたが、ニールは最近 Living with Warという、反戦反ブッシュの新作を発表しました。

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2006/06/the_angry_ameri_e746.html

ニールもいろいろ解釈される人ですが、基本的には、上の人種問題の立場も含めて、そういう立場をずっと取ってきた人だと思います。

Neil_young_freedom89年に発表した Rockin’ in the Free Worldは、その前年の大統領選挙での流行語をもじった部分があったりして、これも反ブッシュ(ただしこっちは親父)の曲だったのに、その直後にあったベルリンの壁の崩壊のテーマソングのような扱いをされて誤解された。これは Born in the USAがブルース・スプリングスティーンの意思に反してレーガンのキャンペーンに使われたのによく似ています。

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2005/08/i_wanna_be_elec.html

日本でも、新しい首相が誕生するようです。

その前の、メリケン国のブッシュ大統領によく似ているあのお方のおかげで、日本でも格差の広がり、二分法、二項対立が起こっているのかもしれません。

新しい時代には、融和を期待したい。

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2006年6月 1日 (木)

The Angry Americans(The Courtesy of Red White and Blue)

またまた物騒なタイトルで始まりました。

Pearl_jam28日のベストヒットUSAで、ホットメニューのコーナー打ち抜きで、Dixie Chicks “Not Ready to Make Nice” Pearl Jam “Worldwide Suicide”という、「同じ色」の新曲二つが立て続けにかかりました。

 両方とも今のアメリカに怒っている曲。

 特にディクシー・チックスのほうは、4年ぶりの新曲で、その4年の間彼女たちの身に降りかかったことへのアンサーソングだという。

 小生の本職の話ですが、英文雑誌を講読する授業をやっていて、「トビー・キースとディクシー・チックスとに分かれるアメリカ」なんて表現が出てくると、単なる音楽好きなんちゃって大学教授の本領発揮であります。

 このことは去年9月、カニエ・ウェストがブッシュ政権のハリケーン・カトリーナ後のニュー・オーリンズ救済政策を批判したということをトピックにしたときにチラッと書いて、いつかまた詳しく書こうと思っていたことです。23年前のアメリカン、ミュージック・アワードの式典の中でも飛び出していました。音楽ファンを越えて普通の人にも広がったごく普通の英会話フレーズ、といえるかもしれません。(http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2005/09/the_city_of_new.html

 また、11月にベン・フォールズの曲「ジーザスランド」について書いたときの、「ジーザスランド」と「カナダ合衆国」とに分断されるアメリカのことでもあります。

http://radiobaka-archive.cocolog-nifty.com/bakabaka/2005/12/jesusland.html

Dixie_chicks_taking_the_long_way番組であったように、03年のロンドン公園の際、ディクシー・チックスのリードシンガー、ナタリー・メインズは、ブッシュ大統領が同じテキサス州の出身であることが恥ずかしい、と発言し波紋を投げかける。特にカントリーの放送局からは放送ボイコット、リスナーに向けてはCD破棄不買運動が呼びかけられる。

結局カントリー・ミュージックとは、田舎、つまり共和党支持者が多い「ジーザスランド」の音楽なので、ナタリーのような立場は同じカントリー・ミュージックでありながら異質なものとして捉えられたのでしょう。

Toby_keith_greatest_hits_2_1そしてその対極にいるのがトビー・キース。彼は同時多発テロ後、ナショナリズムを鼓舞する「怒れるアメリカ人」 The Angry Americans (Courtesy of Red White and Blue)を発表した。これに対しナタリーは、くだらない、クズだ、と発言した。


トビー・キースはこれを聞き、ライブで、ナタリーとサダム・フセインの
2ショット映像を合成し、バックスクリーンに大写しにし、それを背景に歌って大喝采を浴びた。

そしてそしてナタリーは、カントリー・ミュージック・アワォード授賞式に、FUTKとプリントされたノースリーブシャツを着て舞台に上がった。つまり、Fuck You Toby Keithである(書いちゃっていいのかなあ)。

このように、ブッシュへの評価、テロ対策への評価で分裂しているアメリカを象徴するガチンコ対決を演じていた二人でしたが。

その新曲では、

Not ready to make nice, not ready to back down

あんたらと和解していい人になるつもりもない、対決から降りるつもりもない

勝手に世界を変えてしまったあんたらのいうことを聞くつもりもない

ビデオも過激でした。まだまだこの対決は尾を引きそう。

いろいろなアーティストが政治的な作品を発表するようになっていますが、そんな中で、ニール・ヤングの久しぶりの新作が話題を呼びそうです。

Neil_young_living_with_warLiving with War 戦争と生きている、というタイトルで、表題曲で戦時下の異常を歌い、なんと “Let’s Impeach the President”「大統領を弾劾しよう」という曲があり、うそつき戦争屋ブッシュをお払い箱にしようと訴え、それに続く”Looking for a Leader”「新しい指導者を探そう」という曲では、ブッシュの後、バラク・オバマ上院議員やコリン・パウエル前国務長官の名前を直接出して、黒人大統領や女性大統領の誕生を願っています。

もともとはカナダ人のニール・ヤング。ブッシュのアメリカ第一の外交政策は隣国カナダでも不評を買っており、ブッシュを嫌ったアメリカの東北部、中西部、太平洋岸とくっつけられて「カナダ合衆国」と言われるくらいですから、ニール・ヤングも必然的にそのような主張にたどり着いたのでしょう。

現在、ブッシュ大統領は、イラク情勢の行き先不透明、政権内部の不祥事、石油価格の高騰、云々で支持率が就任以来最低の水準を記録しています。

アメリカ人は相変わらず、「怒っている」ようです。

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